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POM(ポリアセタール)の耐薬品性を徹底解説:選定・設計・現場での注意点まで完全ガイド

POM(ポリアセタール)の耐薬品性を徹底解説|化学的安定性と使用環境の完全ガイド

POM(ポリアセタール)は、エンジニアリングプラスチックの中でも耐薬品性と機械的強度のバランスが非常に優れた樹脂として知られています。産業用部品から自動車、医療機器まで幅広く利用されていますが、「どの薬品に強いのか」「使用環境にどんな注意点があるのか」を正しく理解しておくことが重要です。本記事では、POMの耐薬品性の特性を科学的に整理し、適用事例を交えて詳しく解説します。

POM(ポリアセタール)とは?基本構造と特性

POMは、ホルムアルデヒドを重合して得られる熱可塑性樹脂で、化学式で表すと(-CH2O-)の繰り返し構造を持ちます。高い結晶性と分子配列の整然さにより、耐摩耗性、耐疲労性、そして優れた化学的安定性を発揮します。

POMには主に2種類のタイプがあります。

タイプ 化学構造 特徴
ホモポリマー(POM-H) 単一構造 剛性・耐摩耗性が高い
コポリマー(POM-C) 共重合構造 耐薬品性・耐熱安定性に優れる

特にPOM-Cは酸やアルカリに対してより安定であるため、化学薬品に接触する部品ではこちらが選ばれることが多いです。

材料構造や種類の違いに関しては、「POMの種類と選び方」に関して解説で詳しく解説しています。

POMの耐薬品性|酸・アルカリ・有機溶剤への反応性

POMの化学的耐性は、分子内のエーテル結合(-O-)とメチレン基(-CH2-)の安定性に由来します。ただし、すべての薬品に完全に耐えるわけではありません。

薬品の種類 耐性 備考
希酸(酢酸、塩酸など) 良好 短時間接触で問題なし
強酸(硫酸、硝酸) やや不安定 高温下では分解の恐れ
アルカリ(水酸化ナトリウムなど) 良好 常温で安定
有機溶剤(トルエン、ベンゼン) 中程度 長時間で膨潤の恐れ
油類(潤滑油、燃料) 優秀 耐油性が高く、ギア部品にも使用可

このように、POMは弱酸・アルカリ・油類には非常に強く、一方で強酸・高温条件では加水分解を起こす可能性があります。これらの情報はJIS(日本産業規格)でも化学耐性試験として規定されています。

耐薬品性データの見方や比較方法については、「樹脂の耐薬品試験の基礎」に関して解説で詳しく解説しています。

使用環境と注意点|温度・湿度・薬品濃度による影響

POMは安定した構造を持ちますが、使用環境によってその耐薬品性が大きく変わります。特に高温下では酸化や分解が促進されやすくなります。

  • 温度: 80℃を超える環境では耐薬品性が低下。
  • 湿度: 長期的な湿気暴露で分子鎖が劣化。
  • 薬品濃度: 高濃度の酸やアルカリは表面劣化を引き起こす可能性。

また、酸化性薬品(過酸化水素など)はPOM表面を白濁させることがあるため、使用環境を事前にシミュレーションすることが推奨されます。

実際の使用現場での耐久性評価の手法については、「POMの環境試験と耐久評価」に関して解説で詳しく解説しています。

代表的な用途と選定ポイント

耐薬品性の高さから、POMは以下のような環境で活躍しています。

  • 化学プラント配管部品
  • 燃料系コネクター・ギア部品
  • 医療機器の可動パーツ
  • 自動販売機・食品機器の摺動部

用途に応じてPOM-HまたはPOM-Cを選定することが重要です。たとえば高強度を求めるならPOM-H、薬品耐性を重視するならPOM-Cが適しています。

選定に迷う場合は、耐熱性や耐摩耗性など他特性も含めた比較が有効です。関連情報は、「POMの機械的特性比較」に関して解説で詳しく解説しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. POMはどの薬品に対して特に強いのですか?

POMは弱酸・アルカリ・油類に対して非常に優れた耐薬品性を持ちます。特に、希酸(酢酸や塩酸)や潤滑油・燃料などの油類には高い安定性を示します。一方で、強酸や高温環境では分解や膨潤の恐れがあるため注意が必要です。POMの化学的安定性の基礎や試験方法については、樹脂の耐薬品性の基礎に関して解説で詳しく解説しています。JISによる耐薬品試験規格については、JIS(日本産業規格)を参照してください。

Q2. POMを高温環境で使用する際の注意点はありますか?

POMは80℃を超える環境では酸化や加水分解が進みやすく、耐薬品性が低下します。高温条件で使用する場合は、POM-Cのような共重合タイプを選ぶことで安定性が向上します。

Q3. POM-HとPOM-Cでは耐薬品性にどのような違いがありますか?

POM-H(ホモポリマー)は剛性と耐摩耗性に優れ、POM-C(コポリマー)は耐薬品性と耐熱安定性に優れます。化学薬品に接触する環境では、POM-Cがより適しています。選定時には用途と薬品接触条件を考慮することが重要です。

まとめ|POMの耐薬品性を最大限に活かすために

POMは酸やアルカリ、油類に対して非常に強い耐薬品性を持ち、幅広い産業で信頼されています。ただし、強酸や高温条件下では注意が必要です。使用環境に応じた材料選定を行うことで、POMの性能を最大限に引き出すことができます。

本記事ではPOMの耐薬品性の基本から実用面までを徹底的に解説しました。化学的特性の理解を深めることで、より安全で効率的な製品設計が可能になります。

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