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工業用途に最適なPOM樹脂の耐熱温度ガイド

工業用途に欠かせないPOM樹脂。その中でも特に重要な耐熱温度と耐薬品性に焦点を当てて、このPOM樹脂の特性について徹底的に解説します。POM樹脂は、その優れた物性から幅広い工業分野で利用されていますが、それぞれの特性を理解し適切に活用することが重要です。 このガイドでは、POM樹脂の耐熱温度がどのように工業用途に影響を与えるのか、また耐薬品性がどのように機能するのかについて詳しく説明します。さらに、POM樹脂の選定や加工方法についても触れ、工業プロジェクトにおいてPOM樹脂がどのように活躍するかを具体的に示します。 工業用途に最適なPOM樹脂の特性を理解することで、製品の品質向上や生産効率の向上に繋がるかもしれません。このガイドを通じて、POM樹脂の重要性とその利用方法について深く掘り下げてみましょう。

POM樹脂とは

POM樹脂の基本的な性質

ポリアセタール(POM)は、高い機械的特性と優れた耐摩耗性を持つエンジニアリングプラスチックです。以下にPOM樹脂の基本的な性質をまとめます。
特性 内容 メリット デメリット
機械的強度 高い引張強度、圧縮強度、硬度を持つ。 高い耐荷重性能を提供。 高温や長期間の使用で強度が低下する場合がある。
耐摩耗性 優れた摩耗抵抗を持ち、滑り特性が良好。 長期間の使用において摩耗が少なく、耐久性が高い。 摩耗性を維持するためには適切な潤滑が必要。
耐薬品性 多くの化学薬品に対して高い耐性を示す。 酸、アルカリ、油分など多くの薬品に強い。 強酸や強アルカリには弱い場合がある。
熱安定性 温度範囲は-40℃〜100℃(連続使用時)。 一定の温度範囲で安定した性能を発揮。 高温下での物理的特性の劣化が早くなる。
耐UV性 日光や紫外線に対する耐性が限られている。 屋内や暗所での使用に適している。 屋外使用ではUV劣化が発生する可能性がある。
寸法安定性 温度変化に対して非常に安定した寸法を持つ。 精密な部品の製造に適しており、長期間安定した形状を維持。 複雑な形状や高精度が求められる場合はコストがかかることがある。
加工性 加工が容易で、フライス加工や旋盤加工に適している。 高精度の部品製造が可能。 高速切削や過度な熱の発生が避けられない場合、素材が変形することがある。

POM樹脂の代表的な用途

  • 自動車部品:歯車、ベアリング、カム、ギアなどの部品。
  • 家電製品:モーター部品、コンプレッサーパーツ、シャフトなど。
  • 産業機械:ロッカー、プーリー、シールなど。
  • 医療機器:ピストン、ディスプレイ部品、カプセルなど。
POM樹脂は、優れた機械的特性、耐摩耗性、耐薬品性を持っているため、特に精密機器や耐久性が求められる部品に適しています。しかし、UV劣化や高温での特性低下に注意が必要です。使用環境に合わせた選定が重要です。

ポリアセタール樹脂(POM樹脂)の種類

ポリアセタール(POM)は、主に2つのタイプに分類されます。これらのタイプは、それぞれ異なる特性を持ち、特定の用途に適しています。以下に、POM樹脂の主な種類をまとめます。
種類 内容 特徴 用途例
ホモポリマー型 POMの基本的なタイプで、アセタール単位が直鎖状に結合しています。 – 高い強度と剛性 – 優れた耐摩耗性 – 良好な化学抵抗性 自動車部品、精密機器、歯車、ベアリングなど
コポリマー型 POMの基本的なアセタール部分に、他の成分(例えばエチレンオキシド)を加えて改良されたタイプ。 – 低温特性が向上 – 優れた耐衝撃性 – 良好な寸法安定性 精密機械部品、電気機器、カム、シールなど

ホモポリマー型の特徴

  • 機械的特性:高い引張強度、圧縮強度、硬度を持つ。
  • 耐摩耗性:非常に優れた摩耗特性があり、長期使用にも耐える。
  • 化学的耐性:酸やアルカリ、油分に対して強い耐性を持つ。

コポリマー型の特徴

  • 低温特性:低温環境でも優れた機械的性能を発揮。
  • 衝撃耐性:ホモポリマー型よりも衝撃に強い特性を持ち、壊れにくい。
  • 寸法安定性:環境変化に対してより安定しており、精密加工に適している。

代表的な用途

  • ホモポリマー型:歯車、カム、ベアリング、スライド部品、シート部品などの高強度部品。
  • コポリマー型:電子機器の部品、精密機器のギア、インジェクション成形部品など。
POM樹脂は、その優れた物理的特性から多岐にわたる用途で使用されており、特に高い精度が要求される部品や耐久性が求められる部品に適しています。用途に応じて、ホモポリマー型またはコポリマー型を選択することが重要です。

POM(ジュラコン®)の特徴と利点

POM(ジュラコン®)は、工業用途において優れた性能を発揮する樹脂です。その特長と利点を見ていきましょう。まず、POMは耐熱性に優れており、高温環境下でも安定した性能を保ちます。例えば、自動車部品や機械部品などの高温での使用に最適です。さらに、POMは耐薬品性にも優れており、化学薬品に対して高い耐性を持ちます。これにより、医療機器や化学工業などの分野で幅広い用途に活用されています。POMは強度や剛性にも優れており、耐摩耗性も高いため、長期間安定した性能を発揮します。工業用途に求められる厳しい条件下での使用に適していることが、POMの魅力の一つです。

POM樹脂の耐熱温度ガイド

POM樹脂の耐熱性の概要

POM樹脂は工業用途において広く使われていますが、その耐熱性は非常に重要です。耐熱性が高いことで、高温の環境下での安定した性能を発揮し、長期間にわたって優れた機能を提供します。例えば、自動車部品や電子機器などの産業で、POM樹脂は耐熱性の要求が高い部分に広く使用されています。 POM樹脂は耐熱性だけでなく、耐薬品性も優れており、化学薬品などの影響を受けにくい特性を持っています。これにより、さまざまな環境下で安定した性能を発揮し、幅広い産業分野で活躍しています。 POM樹脂の耐熱性は製品の信頼性や耐久性に直結する重要な要素であり、その特性を理解することは製品設計や材料選定において欠かせません。工業用途においてPOM樹脂を選択する際には、耐熱性が十分な製品を選ぶことが重要です。

工業用途での耐熱温度の重要性

POM樹脂は工業用途において幅広く利用されていますが、その中でも耐熱温度は特に重要です。高い耐熱性能を持つPOM樹脂は、様々な産業分野での需要が高まっています。 例えば、自動車部品や電子機器部品など、高温環境下で使用される製品において、耐熱温度が要求されます。POM樹脂はこれらの要件を満たすため、信頼性の高い素材として広く採用されています。 さらに、化学薬品に対する耐性もPOM樹脂の特長の一つです。耐薬品性に優れているため、化学工業などの分野でも重宝されています。 工業用途においてPOM樹脂の耐熱性と耐薬品性は必須の要素となり、その特性を理解することが製品の信頼性向上につながります。

異なるPOMグレードの耐熱温度比較

ポリアセタール(POM)はその物理的特性や耐熱性において異なるグレードがあり、用途によって最適な選定が求められます。以下は、異なるPOMグレードの耐熱温度を比較した表です。
グレード 耐熱温度範囲 (℃) 特徴 用途例
ホモポリマーPOM 100°C ~ 130°C – 高い剛性と強度 – 優れた耐摩耗性と化学耐性 歯車、ベアリング、精密機器部品、スライダーなど
コポリマーPOM 80°C ~ 110°C – 優れた衝撃耐性 – 低温特性が向上 – 良好な寸法安定性 電子機器部品、カム、ギア、シールなど
改良型POM (高耐熱タイプ) 120°C ~ 150°C – 高温環境下での耐久性が向上 – 熱膨張率が低い 自動車部品、産業機械部品、精密機器の耐熱部品
POM/金属複合材料 100°C ~ 140°C – 金属との複合化により耐熱性と機械的強度が向上 高精度部品、高温環境での摩耗部品、オートメーション機器部品

耐熱温度を決定する要因

  • 基材の成分:POMホモポリマーは比較的高い耐熱温度を持つが、コポリマー型は低温での特性が良いため耐熱性がやや劣る。
  • 加工や添加物:高耐熱タイプや金属複合材料は、熱安定性を高めるための特別な処理や添加剤が使用されている。
ポリアセタール樹脂の耐熱性は、その種類や改良の有無によって異なります。高温環境や長時間使用される部品には、改良型や金属複合材料タイプが選ばれることが多く、特定の機械部品や自動車部品において活用されます。

POMの耐薬品性

耐薬品性とは

POM樹脂は工業用途において広く使用されています。その中でも、耐薬品性は非常に重要な特性の一つです。耐薬品性とは、化学薬品や溶剤などの影響を受けにくい性質のことを指します。例えば、自動車部品や機械部品など、化学物質と接する機会が多い場面でPOM樹脂が活躍します。耐薬品性が高いため、長期間にわたって安定した性能を発揮することができます。さらに、耐熱温度も高いため、高温環境下でも力を発揮します。工業用途において、信頼性の高い材料としてPOM樹脂が選ばれる理由の一つが、その耐薬品性にあります。

POM樹脂の耐薬品性の詳細

POM樹脂は工業用途において広く使用される耐熱性に優れた素材です。耐薬品性も高く、化学薬品にも強い特性を持っています。例えば、自動車部品や機械部品の製造に活用されることが多いです。 この樹脂は耐熱温度が高いため、エンジンルームなど高温環境下での使用に適しています。また、耐薬品性が高いため、様々な化学薬品に触れる環境でも安定した性能を発揮します。 POM樹脂はその優れた特性から、自動車産業や電子機器産業など幅広い分野で重要な役割を果たしています。その耐熱性や耐薬品性を活かし、さまざまな製品の製造に活用されています。

POM樹脂の機械設計への応用

POM樹脂を選ぶ際の考慮点

1. 機械的特性

  • 強度・剛性:POM樹脂は高い引張強度と曲げ強度を持ち、機械的なストレスに耐えることができます。設計において、求められる強度と剛性がPOMの特性に適合しているか確認する必要があります。
  • 耐摩耗性:POMは優れた耐摩耗性を発揮します。摩擦が多い部品(例えば、歯車やベアリング)に使用する際は、その耐摩耗性を評価することが重要です。

2. 加工性

  • 切削性:POMは高い加工性を持ち、精密な形状や寸法を容易に得ることができます。加工の精度が求められる部品(例えば、精密機器の部品)には適していますが、加工時の熱や湿度に注意が必要です。
  • 溶接性・接着性:POMは溶接や接着が難しいため、結合方法を考慮する必要があります。接着剤や機械的な固定方法で部品を組み合わせることが求められます。

3. 耐環境性

  • 耐薬品性:POM樹脂は、酸やアルカリ、油脂、溶剤などの多くの化学薬品に耐性を示します。使用される環境において化学薬品の影響を受ける場合、その耐薬品性を確認して選定することが大切です。
  • 耐熱性:POMは比較的高い耐熱性を持ちますが、使用温度範囲は100℃前後です。高温環境で使用する場合、POMの耐熱性を考慮し、温度の影響を受けないか確認する必要があります。

4. コストとライフサイクル

  • コストパフォーマンス:POM樹脂はコスト効率が良く、耐久性にも優れているため、長期間の使用において非常に経済的です。部品の寿命や交換頻度を考慮して、コストと品質のバランスを評価します。
  • 環境への影響:環境に優しい材料を選ぶ際、POMのリサイクル性や廃棄方法も考慮するポイントとなります。

5. 機能性の追加

  • 添加剤の使用:POM樹脂に充填剤や強化繊維を加えることで、さらに優れた特性(例:耐熱性、耐摩耗性)を持たせることができます。特に高荷重がかかる部品や過酷な条件下で使用する部品には、強化型POM樹脂が推奨されます。

機械設計でのPOM樹脂の利点

ポリアセタール(POM)樹脂は、機械設計において非常に有用な特性を持っています。以下に、POM樹脂の主な利点をテーブルでまとめました。
利点 詳細説明
耐摩耗性 摩擦に強く、摩耗やすり減りが少ないため、ギアやベアリングなど摩擦が発生する部品に最適。金属部品よりも長寿命で使用可能。
機械的強度と剛性 引張強度、曲げ強度、圧縮強度に優れ、高負荷がかかる部品(シャフト、カム、リンク機構など)に最適。
低摩擦係数と潤滑性 自己潤滑性があり、潤滑油やグリースなしでスムーズに動作。摩擦を減少させ、効率的に作動する部品を設計可能。
耐薬品性 酸、アルカリ、溶剤、油脂など多くの化学薬品に対する耐性があり、化学薬品が使用される環境でも安心して使用可能。
優れた加工性 精密な切削や加工が可能で、フライス加工や射出成形などで高精度な部品を作成できる。
軽量 金属に比べて軽量で、金属部品の代替として使用可能。軽量化が求められる製品設計に最適。
低騒音特性 運転時の騒音を低減する特性を持ち、静音性が求められる部品(自動車や家電製品の一部)に適している。
耐熱性 約100℃程度まで耐熱性を発揮し、高温環境下でも安定した性能を維持。
電気絶縁性 優れた電気絶縁性を持ち、電気機器や電子機器の部品にも使用可能。
耐湿性 湿度に強く、低吸水率のため湿気の多い環境でも性能を維持。

POMプラスチック加工・樹脂加工

POMの加工性

ポリアセタール(POM)は、その優れた機械的特性や耐摩耗性から多くの機械設計に使用されますが、加工性にも注目する必要があります。POM樹脂は加工が容易であり、様々な加工方法に適していますが、いくつかのポイントに留意することが重要です。
加工方法 特徴 注意点
切削加工 高い精度での加工が可能。フライス盤、旋盤、ドリルなどで容易に加工でき、精密部品の製造に適している。 切削速度を高めすぎないように注意。過度な熱や摩擦を避けるため、適切な切削条件を設定する必要がある。
射出成形 高精度な形状が可能。大量生産向けに使用され、金型設計が重要。 熱膨張率の変化に対応できる金型設計が求められる。成形温度や圧力の調整が重要。
押出成形 長尺部品や薄肉部品の製造に適しており、連続的な成形が可能。 高速な冷却と均一な温度管理が必要。成形後の冷却速度に注意。
旋盤加工 高精度な円形部品や回転体の製造に適しており、特にシャフトやギアなどに使用される。 切削時に材料が過熱しやすいため、冷却材を適切に使用し、加工温度を管理することが重要。
フライス加工 幅広い形状や細かな詳細の部品を作成するのに適しており、表面仕上げが良好。 先端工具が摩耗しやすいため、工具の選定と定期的なメンテナンスが必要。
熱処理 一部のPOMグレードでは熱処理が行われることもあるが、一般的に熱処理は不要。 低温で加工を行い、高温にすると形状が歪みやすいため、適切な温度管理が求められる。

加工時の注意点

  • 冷却管理: POM樹脂は加工時に熱を持ちやすく、過度な加熱は加工精度に悪影響を与えるため、冷却をしっかり行うことが重要です。
  • 切削条件: 高速での切削加工が可能ですが、切削速度や送り速度の最適化が重要です。過度に高速で加工を行うと、焼き付きや摩耗が発生しやすくなります。
  • 工具選定: 切削工具の選定も大切です。鋭い刃先の工具を使用することで、仕上がりが良好になり、摩耗も軽減されます。
POM樹脂は加工しやすい樹脂材料であり、機械加工や射出成形などで広く使用されていますが、加工精度を高めるためには温度管理や冷却、適切な加工条件の設定が不可欠です。

POM加工の技術とプロセス

ポリアセタール(POM)樹脂は、その高い機械的強度や耐摩耗性から、精密機械部品やギア、ベアリングなどの製造に広く利用されています。POM樹脂の加工は、一般的なプラスチック加工技術を使用することができますが、いくつかのポイントに留意することで、より高精度で効率的な加工が可能となります。

1. 切削加工技術

POM樹脂は、フライス盤や旋盤などの切削機械で加工することができます。この方法では、部品の精度や表面品質を高めることができ、特に複雑な形状の製作に向いています。
切削加工方法 特徴 ポイント
旋盤加工 円形部品やシャフトの製作に適しており、高精度な加工が可能。 切削速度を適切に調整し、冷却をしっかり行うことが重要。過度な加熱を避ける。
フライス加工 平面や複雑な形状の部品の加工に使用され、精密な仕上げが可能。 工具の選定や冷却液の使用に注意。摩耗を防ぐため、工具の定期的な点検が必要。
ドリル加工 穴あけ加工に適しており、精度の高い穴を開けることができる。 高速回転を避け、切削条件を最適化して熱の発生を防ぐ。穴の仕上がり品質を高める。

2. 射出成形技術

POM樹脂は、射出成形を使用することで、大量生産が可能です。この方法では、複雑な形状や細部まで再現することができます。特に自動車部品や電子機器の部品などに利用されます。
射出成形 特徴 ポイント
成形温度 POM樹脂の成形温度は通常180〜220°Cの範囲で設定される。 適切な温度設定が重要で、過度な加熱は部品の歪みを引き起こすことがある。
冷却速度 冷却は均等に行う必要があり、急激な冷却は変形を引き起こす可能性がある。 冷却の不均等が原因でひずみや応力が発生するため、冷却速度の制御が大切。
金型設計 高精度な金型設計が必要であり、POM樹脂は収縮率が大きいため特に注意が必要。 金型の冷却路設計や収縮補正設計に注意し、安定した成形品を得るための最適化が求められる。

3. 押出成形技術

押出成形は、長尺部品や薄肉部品の製造に向いており、POM樹脂を連続的に成形することができます。この方法で製造した部品は、精度が高く、一貫した品質が保たれます。
押出成形 特徴 ポイント
成形品の形状 複雑な断面形状を持つ部品や長尺の部品の製造に適している。 成形時の温度と圧力管理が重要で、冷却速度を適切に調整する必要がある。
冷却処理 成形後、急速冷却が必要な場合があるが、均一な冷却が求められる。 冷却が不均一であると部品に歪みが生じるため、冷却方法の管理が不可欠。

4. 加工時の注意点

  • 温度管理: POM樹脂は加熱に敏感であり、過度な加熱は材料の劣化や寸法の歪みを引き起こす可能性があります。加工時には温度を適切に管理することが重要です。
  • 切削条件: 適切な切削速度や送り速度を設定することで、効率的に加工でき、仕上がりの品質を向上させることができます。
  • 冷却: POMは加工中に熱を持ちやすいため、適切な冷却を行うことが重要です。冷却液を使用し、熱の蓄積を防ぐことが必要です。

5. 高精度加工技術

POM樹脂を高精度で加工するためには、加工機の精度や工具の選定、そして冷却条件の最適化が重要です。これにより、寸法精度や表面仕上がりを良好に保つことができます。
精度向上のポイント 具体的な技術
切削速度の最適化 高速切削でも過度な加熱を避け、加工精度を向上させる。
工具の選定とメンテナンス 高品質な工具を使用し、摩耗を防ぐために定期的な点検とメンテナンスを行う。
温度管理と冷却 一貫した冷却を行い、加熱を最小限に抑えることで安定した加工を実現。
POM樹脂の加工には、適切な加工技術の選択、切削条件や冷却方法の最適化が重要です。これらのプロセスを管理することで、POM樹脂を高精度に加工し、優れた機械的特性を持つ製品を効率的に製造することができます。

POMポリアセタール樹脂の物性

POMポリアセタールの物性の解説

POM(ポリアセタール)樹脂は、高い機械的強度、耐摩耗性、低摩擦特性などに優れた性質を持つエンジニアリングプラスチックです。以下では、POMの物性に関連する主要な特性を解説します。

1. 機械的特性

POM樹脂は、優れた強度、剛性、耐摩耗性を有し、精密部品や機械部品に最適です。特に以下のような特性があります:
物性 POMの特性 説明
引張強度 約60-70 MPa POMは高い引張強度を持ち、強度が求められる部品に適しています。
曲げ強度 約90-110 MPa 高い曲げ強度により、構造物や支持部品としても使用できます。
引張伸び 約20% 引張強度に対する伸びがあるため、変形にも対応できる。
弾性率 約2.5 GPa 高い弾性率を持つため、剛性が求められる用途に最適です。

2. 耐熱性

POM樹脂は比較的高い耐熱性を有しており、一定温度範囲内で安定した機械的性質を保つことができます。
物性 POMの特性 説明
熱変形温度 約90-100°C POMは比較的低い温度で変形が始まりますが、これにより低温環境でも使用が可能です。
連続使用温度 約80°C 長時間高温下で使用しても安定した特性を保つことができます。

3. 耐薬品性

POM樹脂は優れた耐薬品性を持ち、酸、アルカリ、油分などに対して高い耐性を示します。しかし、強酸や強塩基、強酸化剤などには注意が必要です。
物性 POMの特性 説明
耐酸性 一部の酸に耐性がある 特に有機酸や希薄酸に耐性がありますが、強酸には注意が必要。
耐アルカリ性 弱いアルカリに対して耐性あり 強アルカリには耐性が低いが、一般的なアルカリ環境には問題ない。

4. 耐摩耗性

POMは非常に優れた耐摩耗性を有しており、摩擦の発生を抑えるため、ギアやベアリング、スライディング部品などに使用されます。
物性 POMの特性 説明
摩擦係数 約0.25-0.3 POMは低摩擦性を持ち、摩耗を最小限に抑えるため、動的部品に最適です。

5. 電気特性

POM樹脂は絶縁性が高く、電気絶縁材として使用されることがあります。
物性 POMの特性 説明
絶縁性 優れた絶縁性 高い絶縁性を有し、電気機器の部品に使用されることが多い。

6. 加工性

POMは加工が比較的簡単で、射出成形や圧縮成形、切削加工など、さまざまな加工方法に対応します。加工性の良さもPOMの特徴の一つです。
物性 POMの特性 説明
加工温度 約180-220°C 加工温度を適切に設定することで、優れた仕上がりを得ることができます。
切削性 良好 高精度の加工が可能で、ギアや小型部品など精密加工が求められる部品に適しています。

7. その他の特性

POMは衝撃強度もあり、低温環境でも使用が可能です。また、長期間使用しても変形しにくく、安定した物性を維持します。
物性 POMの特性 説明
衝撃強度 良好 POMは衝撃に強く、低温でも割れにくいため、過酷な条件下でも使用可能です。

POM(ポリアセタール)樹脂はその優れた機械的性質、耐熱性、耐薬品性により、多様な産業で広く利用されています。特に精密部品や動作部品、耐摩耗性が求められる部品に最適で、効率的な加工が可能なことから、高品質な製品の製造に欠かせない素材となっています。

物性に基づくPOM樹脂の選定方法

POM(ポリアセタール)樹脂は、さまざまな産業で利用されるエンジニアリングプラスチックの一つです。選定時には、特定の用途に最適な物性を考慮することが重要です。以下では、POM樹脂の物性に基づいて、選定方法を説明します。

1. 機械的特性の選定

POM樹脂は高い強度と耐摩耗性を持つため、機械部品や精密部品に使用されます。部品の使用環境や動作条件に応じて、適切な機械的特性を選びましょう。
物性 選定ポイント 用途例
引張強度 高い引張強度が必要な場合(約60-70 MPa) 歯車、シャフト、精密部品
曲げ強度 曲げに耐える部品が必要な場合(約90-110 MPa) 支柱、部品ホルダー、構造物
摩擦係数 低摩擦が求められる場合(約0.25-0.3) ベアリング、スライディング部品

2. 耐熱性の選定

POM樹脂の耐熱性は比較的高いですが、使用温度によってはグレードの選定が必要です。高温環境での使用が求められる場合、耐熱グレードを選ぶことが重要です。
物性 選定ポイント 用途例
熱変形温度 高温環境での使用が必要な場合(約90-100°C) 自動車部品、電子機器部品
連続使用温度 長期間高温で使用する場合(約80°C) 長寿命を要求される機械部品、製造設備

3. 耐薬品性の選定

POMは耐薬品性が高いですが、酸やアルカリなどには限界があります。特定の化学薬品と接触する部品には、耐薬品性に優れたPOMを選びましょう。
物性 選定ポイント 用途例
耐酸性 酸に耐性が必要な場合 化学プラント用機械部品、薬品処理装置
耐アルカリ性 アルカリ環境に適した素材が必要な場合 産業用清掃装置部品、製薬業界の設備部品

4. 耐摩耗性と摩擦特性の選定

高摩耗環境での使用が求められる部品では、耐摩耗性や摩擦特性を重視してPOM樹脂を選定します。低摩擦が必要な部品には、滑り性が良いグレードを選びましょう。
物性 選定ポイント 用途例
摩耗特性 高い耐摩耗性が求められる場合(摩擦係数0.25-0.3) ギア、ベアリング、スライディング部品
摩擦係数 摩擦による部品の劣化が問題となる場合 車両部品、機械部品、精密装置

5. 加工性の選定

POM樹脂は加工性が良いため、精密加工や複雑な形状が求められる部品にも使用されます。加工方法に応じて最適なPOM樹脂を選定します。
物性 選定ポイント 用途例
加工性 高精度な加工が求められる場合 精密機械部品、医療機器、電子機器
加工温度 最適な加工温度範囲で成形したい場合(約180-220°C) 射出成形、圧縮成形などの加工部品

6. 電気特性の選定

POMは絶縁性が高いため、電気絶縁部品としても利用されます。電気機器や電子機器の部品では、絶縁性を重視してPOMを選定します。
物性 選定ポイント 用途例
絶縁性 電気絶縁性が求められる場合 電子機器、電気配線部品

POM樹脂の選定は、使用する環境や部品の特性に応じて、機械的特性、耐熱性、耐薬品性、摩擦特性などを考慮し、最適なグレードを選択することが大切です。目的に合ったPOM樹脂を選ぶことで、製品の性能を最大化し、長期的に安定した使用が可能となります。

まとめ

POM樹脂は工業用途において優れた性能を持ち、耐薬品性や耐熱性が特に注目されています。耐熱温度ガイドに基づいて、適切な用途にPOM樹脂を活用することで、高い信頼性を確保することができます。また、POM樹脂は潤滑性にも優れており、摩擦や磨耗を抑制するために幅広く利用されています。これにより、製品の耐久性や寿命を向上させることが可能です。