エンジニアリングプラスチック徹底比較!各種類とその特性まとめ

エンジニアリングプラスチックは現代の産業界において欠かせない素材となっています。その多様な種類や特性、それぞれの違いについて正しく理解することは、製品開発や製造において重要な要素です。本記事では、エンジニアリングプラスチックの各種類とその特性を徹底的に比較しましょう。どのようなプラスチックがどんな特性を持ち、どのような用途に適しているのか。その情報を手に入れることで、製品設計や素材選定においてより良い判断ができるようになるでしょう。さあ、エンジニアリングプラスチックの世界へご一緒に探求してみましょう。
Contents
エンジニアリングプラスチックとは
エンジニアリングプラスチックの定義
エンジニアリングプラスチック(Engineering Plastics)は、優れた機械的特性、耐熱性、耐薬品性、及び耐久性を持つプラスチック材料の一種です。これらのプラスチックは、一般的に高性能な部品や製品に使用され、金属やセラミックスの代替として利用されることが多いです。エンジニアリングプラスチックは、厳しい環境条件下でも機能するため、航空宇宙、自動車、電子機器、医療機器など、さまざまな産業で利用されています。 代表的なエンジニアリングプラスチックには、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などがあります。一般プラスチックとの違い
エンジニアリングプラスチックと一般プラスチック(コンシューマープラスチック)にはいくつかの重要な違いがあります:- 機械的強度: 一般プラスチック(例:ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)は比較的低い機械的強度を持ちますが、エンジニアリングプラスチックは高い強度と剛性を持っています。これにより、エンジニアリングプラスチックは金属部品の代替として使用されることが多いです。
- 耐熱性: エンジニアリングプラスチックは高温環境においても安定した性能を発揮しますが、一般プラスチックは高温下で変形したり、機械的特性が低下することがあります。
- 耐薬品性: 一部のエンジニアリングプラスチックは化学薬品に対して優れた耐性を持ちますが、一般プラスチックは薬品や溶剤に弱いことが多いです。
- 加工性: 一般プラスチックは簡単に成形や加工が可能である一方、エンジニアリングプラスチックは高精度な加工が必要な場合が多く、専用の加工技術が要求されます。
エンプラの種類と基本特性
ポリアミド(PA)
ポリアミド(PA)は、耐摩耗性や強度、剛性に優れたエンジニアリングプラスチックです。特に自動車部品や機械部品に広く使用されています。PAは耐熱性にも優れ、長期間の使用でも安定した性能を発揮します。また、耐化学薬品性も高く、食品加工などにも利用されます。代表的なポリアミドにはナイロン6(PA6)やナイロン66(PA66)があります。- 特性: 高強度、高耐摩耗性、耐薬品性、良好な加工性
- 用途: 自動車部品、機械部品、電気・電子機器、繊維
ポリカーボネート(PC)
ポリカーボネート(PC)は、透明性と高い衝撃強度を持つエンジニアリングプラスチックです。特に透明性が求められる部品や、衝撃に強い部品に利用されます。PCは耐熱性もあり、一定の温度域で使用可能です。また、加工しやすく、成形性にも優れています。- 特性: 高透明性、高衝撃強度、耐熱性、良好な成形性
- 用途: 光学機器、電子機器の部品、ヘルメット、照明カバー
ポリアセタール(POM)
ポリアセタール(POM)は、非常に優れた耐摩耗性と低摩擦特性を持つエンジニアリングプラスチックです。機械部品やギア、ベアリングなどの部品に使用されます。また、POMは化学薬品にも強く、安定した性能を発揮します。- 特性: 高耐摩耗性、低摩擦性、優れた機械的強度、化学薬品に強い
- 用途: 自動車部品、機械部品、歯車、ベアリング
ポリブチレンテレフタレート(PBT)
ポリブチレンテレフタレート(PBT)は、優れた耐熱性、耐薬品性、機械的強度を持つエンジニアリングプラスチックです。電気・電子機器の部品や自動車部品に多く使用されます。PBTは絶縁性も高く、特に電気・電子業界での利用が進んでいます。- 特性: 耐熱性、耐薬品性、機械的強度、絶縁性
- 用途: 電気・電子機器、自動車部品、コネクタ
ポリフェニレンサルファイド(PPS)
ポリフェニレンサルファイド(PPS)は、非常に優れた耐熱性と化学薬品に対する耐性を持つエンジニアリングプラスチックです。高温環境での使用に強いため、主にエンジン部品や化学プラント機器で利用されています。また、PPSは高い機械的強度と絶縁性も特徴です。- 特性: 優れた耐熱性、耐薬品性、高機械的強度、優れた絶縁性
- 用途: エンジン部品、化学プラント機器、電気機器部品
各種エンジニアリングプラスチックの比較
耐熱性の比較
エンジニアリングプラスチックの耐熱性は、使用環境における高温耐性を示します。ポリフェニレンサルファイド(PPS)は、非常に高い耐熱性を誇り、約260°Cまで使用可能です。ポリカーボネート(PC)も耐熱性に優れており、約130°C程度の使用が可能です。一方、ポリアミド(PA)やポリブチレンテレフタレート(PBT)は比較的低めの耐熱性(約100°C〜150°C)ですが、通常の使用環境には十分対応できます。- ポリフェニレンサルファイド(PPS): 約260°C
- ポリカーボネート(PC): 約130°C
- ポリアミド(PA): 約100°C〜150°C
- ポリブチレンテレフタレート(PBT): 約100°C〜150°C
耐化学薬品性の比較
エンジニアリングプラスチックの耐化学薬品性は、特に過酷な化学環境で使用される材料にとって重要です。ポリフェニレンサルファイド(PPS)は、非常に優れた耐薬品性を持ち、強酸や強アルカリにも耐性があります。ポリアミド(PA)も良好な耐薬品性を持ちますが、特定の強酸やアルカリには劣ることがあります。ポリカーボネート(PC)やポリブチレンテレフタレート(PBT)は、化学薬品に対する耐性は高くないため、使用環境に注意が必要です。- ポリフェニレンサルファイド(PPS): 高い耐薬品性(強酸、強アルカリにも耐性)
- ポリアミド(PA): 良好な耐薬品性
- ポリカーボネート(PC): 中程度の耐薬品性
- ポリブチレンテレフタレート(PBT): 中程度の耐薬品性
機械的特性の比較
エンジニアリングプラスチックは、強度や剛性、耐摩耗性などの機械的特性においても差があります。ポリアミド(PA)は、優れた耐摩耗性と強度を持つため、機械部品や摩擦部品に多く使用されます。ポリカーボネート(PC)は、高い衝撃強度を持ちますが、他のエンプラに比べて強度がやや低くなることがあります。ポリブチレンテレフタレート(PBT)は、高い機械的強度と良好な耐摩耗性を有します。ポリフェニレンサルファイド(PPS)は、非常に優れた機械的強度を持ち、高温環境でも安定した性能を発揮します。- ポリフェニレンサルファイド(PPS): 高機械的強度、高温安定性
- ポリアミド(PA): 高耐摩耗性、高強度
- ポリカーボネート(PC): 高衝撃強度
- ポリブチレンテレフタレート(PBT): 高機械的強度、良好な耐摩耗性
加工性の比較
エンジニアリングプラスチックの加工性は、成形や加工のしやすさに関連しています。ポリカーボネート(PC)は、加工が容易で、成形性が非常に高いため、さまざまな形状に成形可能です。ポリブチレンテレフタレート(PBT)も加工性に優れており、射出成形に適しています。ポリアミド(PA)は、加工には多少の難しさがあり、乾燥が必要な場合があります。ポリフェニレンサルファイド(PPS)は、加工が難しく、専用の設備や技術が必要です。- ポリカーボネート(PC): 加工性が高い、成形性が良好
- ポリブチレンテレフタレート(PBT): 加工性が良好、射出成形に適している
- ポリアミド(PA): 加工には乾燥が必要、難易度がやや高い
- ポリフェニレンサルファイド(PPS): 加工が難しく、専用設備が必要
エンプラの特性に関する詳細分析
強度と剛性
エンジニアリングプラスチック(エンプラ)は、機械的強度と剛性が高い材料であり、特に動的荷重がかかる部品に適しています。強度は材料がどれだけの力に耐えられるかを示し、剛性は変形に対する抵抗力を示します。ポリカーボネート(PC)やポリアミド(PA)は高い剛性を持ち、特に機械部品や構造部品に利用されます。ポリフェニレンサルファイド(PPS)は、特に高温環境でも優れた強度を維持し、剛性も高いです。- ポリカーボネート(PC): 高い剛性、良好な強度
- ポリアミド(PA): 高強度、良好な剛性
- ポリフェニレンサルファイド(PPS): 高温でも優れた強度、剛性
衝撃強度と耐久性
衝撃強度は、材料が急激な衝撃や力を受けた際に破壊されにくい特性です。ポリカーボネート(PC)は非常に高い衝撃強度を持ち、衝撃に対して耐性が強い材料です。ポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリアセタール(POM)は衝撃強度も高く、耐久性に優れ、長期間使用しても劣化しにくいです。ポリアミド(PA)は衝撃強度が比較的低く、衝撃に弱い場合がありますが、耐久性は良好です。- ポリカーボネート(PC): 非常に高い衝撃強度
- ポリフェニレンサルファイド(PPS): 高い衝撃強度、耐久性
- ポリアセタール(POM): 高い衝撃強度、耐久性
- ポリアミド(PA): 衝撃強度が比較的低いが耐久性は良好
熱変形温度
熱変形温度(HDT)は、材料がどの温度まで耐えられるか、特に使用中に形状が変わる温度を示します。ポリフェニレンサルファイド(PPS)は非常に高い熱変形温度を持ち、最大で260°C以上に耐えることができます。ポリカーボネート(PC)は比較的低い温度(約130°C)に設定されていますが、一般的な使用には問題ありません。ポリアミド(PA)やポリブチレンテレフタレート(PBT)はさらに低い温度範囲で使用されます。- ポリフェニレンサルファイド(PPS): 約260°C以上の耐熱性
- ポリカーボネート(PC): 約130°C
- ポリアミド(PA): 約100°C〜150°C
- ポリブチレンテレフタレート(PBT): 約100°C〜150°C
耐摩耗性と自己潤滑性
エンジニアリングプラスチックは摩擦部品や摩耗の多い環境で優れた耐摩耗性を発揮します。ポリアミド(PA)は特に耐摩耗性に優れ、摩擦係数が低いため、摩擦の多い部品に適しています。ポリアセタール(POM)も耐摩耗性が高く、自己潤滑性を持っているため、ギアやベアリングなどに使用されます。ポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリカーボネート(PC)は、自己潤滑性を有している場合もあり、摩耗環境での耐性が向上します。- ポリカーボネート(PC): 中程度の耐摩耗性、自己潤滑性がある場合も
- ポリアミド(PA): 高い耐摩耗性、良好な摩擦特性
- ポリアセタール(POM): 非常に高い耐摩耗性、優れた自己潤滑性
- ポリフェニレンサルファイド(PPS): 高い耐摩耗性、優れた自己潤滑性