旋盤 ねじ切り|基本から種類・加工方法・注意点まで徹底解説

旋盤加工で「ねじ切り」を調べるユーザーは、旋盤でのねじの作り方、加工方法、規格、刃物選定、注意点などを知りたいと考えています。
この記事では、旋盤でのねじ切り加工に関する基礎知識から実践的な情報までを整理して解説します。
Contents
1. 旋盤ねじ切りの基本知識・定義
旋盤ねじ切りとは
旋盤ねじ切りとは、旋盤を用いて金属部品の外径または内径にねじ山を形成する加工です。
ボルト・ナット・シャフトなど、ねじを必要とする部品に適用されます。
- 目的
- 部品の組み付け
- 締結機能の付与
- 精密部品の規格化
- 特殊用途ねじの作製
- 対象部品
- 外径ねじ(シャフトやボルト)
- 内径ねじ(ナットや穴)
- 特殊ねじ(テーパーねじ、リードねじ、トラペゾイドねじなど)
旋盤ねじ切りとタップ・ダイスの違い
項目 | 旋盤ねじ切り | タップ・ダイス |
---|---|---|
方法 | 回転するワークに刃物を当て切削 | ハンドツールでねじ山を切削 |
精度 | 高精度、任意ピッチに対応可能 | 標準ピッチ中心、精度は中程度 |
用途 | 金属部品量産・精密部品 | 小物や手作業向き |
再現性 | 高い | 手作業は低い |
対応形状 | 外径・内径・特殊形状 | 外径・内径限定 |
2. 旋盤ねじ切りの特徴・メリット・デメリット
特徴
- ワークを回転させ、刃物で直接ねじを削る
- 外径・内径・特殊形状のねじに対応可能
- 切削条件により精度や面粗さが変化
- NC/CNC旋盤使用で自動化・高精度化が可能
メリット
- 高精度なねじ山形成が可能
- 特殊ピッチや非標準ねじにも対応可能
- 量産向け自動加工が容易
- 材質や形状に応じた加工条件設定で再現性向上
デメリット
- 刃物選定や送り速度調整が重要
- 内径ねじや小径ねじは加工難易度が高い
- 切削条件を誤るとねじ山の破損や寸法不良が発生
- 深穴や小径加工では刃物アクセス制限
数値・規格例
- 標準ねじ(JIS規格)例
- M6×1.0、M10×1.5など
- ピッチ精度
- ±0.05mm程度
- 切削速度
- 20〜60 m/min(鋼材)、アルミは80〜120 m/min
- 送り量
- 0.1〜0.3 mm/rev
3. 旋盤ねじ切りの種類・分類
3-1. 加工対象による分類
- 外径ねじ切り
- シャフトやボルトの外周にねじを形成
- 組付け・締結用
- 内径ねじ切り
- ナットや穴内にねじ山形成
- 部品挿入や固定用
- 特殊ねじ
- テーパーねじ、リードねじ、トラペゾイドねじ
- 精密機械・特殊用途部品向け
- 小径・深穴ねじ切り
- 精密部品、微小部品向け
- 専用延長バイトやCNC制御を使用
3-2. 刃物の種類
刃物種類 | 特徴 | 用途 |
---|---|---|
HSSバイト | 高速度鋼、汎用性 | 小物・試作 |
超硬バイト | 耐摩耗性が高い | 長寿命・硬材加工 |
ねじ切り専用バイト | ねじ角度・形状に合わせ設計 | 高精度ねじ加工 |
コーナーR用バイト | 小径・深穴用 | 精密部品向け |
3-3. 加工方法の分類
- 手動ねじ切り
- 古典的旋盤での手動操作
- 小ロット・試作向け
- 半自動/自動(NC/CNC旋盤)
- ピッチ・角度をプログラム制御
- 高精度・量産向き
- 再現性が高く複雑形状にも対応可能
4. 旋盤ねじ切りの選び方・使用上の注意点
選び方
- 部品形状・寸法に適した刃物
- 外径か内径かによる加工条件
- 材質(鋼、ステンレス、アルミなど)に応じた切削速度
- NC旋盤か手動旋盤かの選択
- 精度要求に応じた切削条件の設定
使用上の注意点
- 刃物角度・送り量の正確な設定
- 切削液を使用し切りくずの排出を確保
- 内径ねじは小径・深穴で刃物アクセスが困難
- 過切削でねじ山の強度低下や寸法不良を防止
- 安全対策:切りくず飛散、手指巻き込み防止
- 刃物摩耗や刃先崩れの定期確認
- NC旋盤ではプログラム誤りに注意
5. 導入事例・具体例
自動車部品
- シャフトやボルトの外径ねじ加工
- ナットや穴内の内径ねじ加工
- CNC旋盤で多品種少量生産に対応
機械装置部品
- テーパーねじによる嵌合部品の加工
- トラペゾイドねじによるリードスクリュー部品
- NC旋盤で高精度再現性確保
精密部品・試作
- 小径ねじ切りや深穴ねじ加工
- コーナーR用バイトや専用工具で精密加工
6. よくある質問(FAQ)
Q1. NC旋盤と手動旋盤のねじ切り精度は?
→ NC旋盤は±0.01〜0.05mm、手動旋盤は±0.1〜0.2mmが目安です。
Q2. 内径ねじはどうやって加工しますか?
→ 穴に専用バイトやタップを用い、刃物を深く入れて切削します。切削液使用で精度向上。
Q3. ねじ切り時の切削条件は?
→ 材質により異なります。鋼は20〜60 m/min、アルミは80〜120 m/minが目安です。
Q4. 特殊ピッチのねじも旋盤で作れますか?
→ はい、NC/CNC旋盤で任意ピッチ・非標準ねじの加工が可能です。
Q5. ねじ切り加工後の仕上げは必要ですか?
→ 外径ねじは研削・バリ取り、内径ねじはタップ仕上げやバリ除去を行うと精度・安全性向上。
7. まとめ・次のステップ
- 旋盤ねじ切りは外径・内径・特殊ねじを高精度で形成する加工
- 刃物選定、切削条件、切削液使用が精度向上のポイント
- NC旋盤活用で量産・高精度・再現性の高いねじ加工が可能
- 加工前に材質・形状・ピッチを確認し、最適な条件を設定することが重要
- 小径・深穴ねじは専用バイトや工具選定で精密加工を実現