【POM高精度加工】耐熱性に優れた素材の特性と用途について

1. POM 高精度 加工 耐熱性の基礎知識
1-1. POMとは何か
POM(ポリアセタール)は、エンジニアリングプラスチックの一種で、高い機械的強度と寸法安定性を持つ樹脂です。結晶性が高く、耐摩耗性や自己潤滑性にも優れていることから、機械部品や精密部品の材料として広く使用されています。英語では「Polyoxymethylene」と呼ばれ、「アセタール樹脂」や「デルリン(DuPontの商品名)」としても知られています。
1-2. POMの特性と利点
POMの主な特性は以下の通りです。
- 高い剛性と強度を持つ
- 寸法精度が優れており高精度加工に最適
- 耐摩耗性が高く、摺動部品に適している
- 吸水率が低く、湿度変化による寸法変化が小さい
- 優れた耐薬品性(ただし強酸には注意が必要)
- 電気絶縁性にも優れる
これらの特性により、歯車、カム、ベアリング、バルブ部品、計測機器など、精度と耐久性が求められる用途で採用されています。
2. POM 高精度 加工技術
2-1. POMの加工方法
POMの加工には以下の方法が一般的に用いられます。
- 切削加工:旋盤加工、フライス加工、ボール盤加工などで寸法精度の高い加工が可能。
- 射出成形:量産向きで、複雑な形状にも対応できる。
- 熱曲げ加工・接着加工:一部用途で応用されるが、POMは接着が困難なため特殊処理が必要。
切削加工では、刃物の摩耗を抑えながら高速で加工できるため、製造効率が高いという利点があります。
2-2. 加工時の注意点
POMを加工する際には以下の点に注意が必要です。
- 切削熱による変形や変質を防ぐため、冷却や送り速度の調整が必要
- 静電気が発生しやすいため、切粉の処理や除電対策を行う
- 薄肉や微細加工では、反りやクラックに注意
- 接着性が悪いため、接合が必要な場合はねじ固定や超音波溶着が推奨される
高精度加工を実現するためには、工具選定や加工条件の最適化が重要です。
3. POM 高精度 加工における耐熱性
3-1. POM樹脂の耐熱温度
POMの耐熱温度は連続使用でおよそ90〜110℃程度とされています。短時間であれば120℃前後まで耐えられるものもありますが、長時間高温にさらされると物性が劣化する可能性があります。
耐熱グレードのPOMでは、耐熱温度がやや向上し、電子部品や自動車のエンジン周辺部品など、温度変化が激しい環境でも使用されます。
3-2. 耐熱性が求められる用途
POMの耐熱性が活かされる代表的な用途には以下が挙げられます。
- 自動車部品:エンジンルーム内の部品、燃料系統部品
- 電子機器部品:発熱の多い基板周辺や絶縁部品
- 医療機器:オートクレーブ対応の器具構成部材(高耐熱グレード)
- 食品機械部品:洗浄時の高温処理に耐える構成部材
高精度と耐熱性を両立するPOMは、安定した寸法精度と物性を長期間維持できる素材として多くの産業分野で採用されています。
4. POM材の熱膨張率とその影響
4-1. 熱膨張率とは
熱膨張率とは、温度が上昇した際に物質がどれだけ膨張するかを示す値です。一般的には「線膨張係数(CTE)」で表され、単位は「1/K」または「μm/m・K」が用いられます。材料が温度変化によって寸法変化を起こすことは、機械部品の設計や使用環境に大きな影響を与えます。
4-2. POMの熱膨張率がもたらす影響
POM(ポリアセタール)の線膨張係数は、およそ80~120×10⁻⁶/Kとされています。この数値は金属と比較すると大きいため、以下のような影響を考慮する必要があります。
- 高温環境では寸法が変化しやすい:特に精密部品や摺動部では、組み合わせる部品とのクリアランス設計に注意が必要です。
- 長さが大きい部品では変化が顕著:熱膨張による歪みやズレが発生しやすくなります。
- 温度変化が激しい用途には対策が必要:温度制御、材質選定、構造工夫などで熱膨張の影響を最小限に抑えることが重要です。
そのため、POMの使用にあたっては、熱膨張率を考慮した設計と材料選定が求められます。
5. POM樹脂の耐久性と特性
5-1. POMの耐久性について
POMは機械的強度が高く、長期使用においても形状や性能が維持されやすいという特性があります。耐摩耗性や自己潤滑性があり、繰り返しの摺動に対しても劣化が少なく、摩耗粉の発生も抑えられます。
また、POMは吸水性が低いため、水分による寸法変化が少なく、耐水性・耐湿性に優れることも耐久性に寄与しています。
5-2. POMの特性がもたらす利点
POMの主な特性がもたらす利点には以下が挙げられます。
- 長寿命:高い耐摩耗性と機械的強度により、交換頻度が低減
- 低メンテナンス:自己潤滑性によりグリースレス運用が可能
- 安定した寸法保持:吸水率が低く、環境変化に強い
- 静音性の向上:金属と比べて衝撃音が少なく静かな動作が可能
これらの特性は、生産設備や自動機、消費財製品などにおいて、性能とコストの両立を実現します。
6. POMを使用した機械部品の性能
6-1. POM部品の強度と性能
POMは高い引張強度(60〜70MPa程度)を持ち、耐衝撃性にも優れています。また、高剛性により、荷重がかかる場面でもたわみにくく、精度を保ちやすい特徴があります。
さらに耐疲労性も高く、繰り返し荷重に対して割れや変形が生じにくいため、連続運転を要する部品にも適しています。
6-2. POMと他の材料との比較
POMはその性能から、他のエンジニアリングプラスチックや金属と比較されることが多いです。以下に代表的な比較ポイントを挙げます。
- 対ナイロン(PA):吸水率が低いため、寸法安定性はPOMが優れる。摩耗性もPOMがやや上。
- 対ポリカーボネート(PC):剛性と摺動性ではPOMが有利。耐衝撃性はPCが上回る。
- 対アルミニウム:POMは軽量でコストが低く、加工もしやすい。強度や熱伝導率はアルミが優れる。
このように、POMは高精度・高耐久性が求められる機械部品において、コストと性能のバランスに優れた材料として選ばれています。
まとめ
POM(ポリアセタール)は、高精度加工が可能な耐熱性に優れたプラスチック素材です。優れた機械的特性や低摩擦特性を持ち、自動車部品や電子機器、医療機器など幅広い用途で利用されています。耐薬品性も高く、長寿命が求められる製品に最適です。